柚子
YUZU
「香りで、勝負します。」
わたしは香りが命。栓を抜いた瞬間に、もう仕事は半分おわってる。冷やして、ひと息ついて、それから飲んでね。
雨あがりの空にかかる、あの七いろ。あれを一本の瓶に詰められないかと、初代がいたずら半分でつくったのが、わたしのはじまりです。
昭和32年、静岡の銘水町。井戸の水がそれはおいしくて、近所の柑橘とあわせて炭酸にしてみたら、町じゅうの子どもが瓶を空にしました。それから今日まで、つくりかたはほとんど変えていません。
派手な広告も、長い能書きもありません。栓を抜いたときの、あのシュワッという音。それがわたしの自己紹介がわりです。
フレーバーごとに、性格がちがいます。今日のあなたに合うのは、どの子でしょう。
「香りで、勝負します。」
わたしは香りが命。栓を抜いた瞬間に、もう仕事は半分おわってる。冷やして、ひと息ついて、それから飲んでね。
「甘いのに、さっぱり。」
わたし、欲ばりなの。甘さも酸っぱさも、ぜんぶ欲しい。白いワタごと使うから、ほろ苦いとこまで連れていくよ。
「酸っぱいの、得意です。」
甘ったるいのは、ちょっと苦手でね。きりっと酸っぱく、後味すっきり。揚げ物のとなりが、わたしの特等席。
「みんなの、人気者。」
わたしは八方美人。子どもにも大人にも好かれちゃう。むずかしいことは言わない。ただ、おいしいでしょ?
「わたしが、いちばん年上。」
創業からずっといる、古株でね。ビー玉の音も、夏の音。なつかしいって言われるけど、味はずっと現役だよ。
「ちょっと、大人です。」
わたしは夜むき。甘さ控えめ、渋みもひとさじ。グラスに氷を入れて、ゆっくり飲んでくれると、うれしいな。
ただ、まじめにつくっているだけ。そのまじめを、三つだけお話しします。
01 香料に頼らず、その季節の国産柑橘を搾る。だから収穫が終われば、そのフレーバーはお休み。旬がそのまま、味になります。
02 創業から変わらない、町の井戸水で仕込む。やわらかい水だから、炭酸の角が立たず、するりと喉を通ります。
03 大きな機械はありません。小ロットで、人の手で詰めて、人の目で栓をする。だから少しずつしか、世に出せません。
長いようで、あっという間。わたしの来し方を、少しだけ。
初代が町の井戸水と近所の柑橘で炭酸をつくる。「虹みたいだ」と、霓(ニジ)と名づけた。
夏祭りの定番に。ラムネのビー玉の音が、町の夏の合図になった。
機械化の波が来ても、手詰めをやめなかった。「変えないのも、技術だ」と二代目。
国産柑橘のフレーバーを六種に。昔の味のまま、今の食卓へ。
お取り寄せのご相談も、ただのおしゃべりも。わたし、ぜんぶ読みます。