石室サウナ
石灰岩を積んだ蒸し室。冷たい湧き水と外気で、身体に山を通す。
MOUNTAIN RETREAT
霧の稜線に、 石と苔の宿。
天霧野カルスト台地 — 標高 1,000m
数億年の海が隆起した石灰岩の台地。十室だけの隠れ家で、土地の記憶を歩いて巡る。
Ch.01 — PROLOGUE
“Stone keeps no hurry.”
石は、急がない。
雨が滴をかぞえ、苔が時間をまとい、
霧が稜線をなぞって還る。
ここでは、過ぎゆくものだけが、永く残る。
天霧野(あまぎりの)の台地は、はるか昔に海だった。隆起した石灰岩が雨と風に彫られ、鍾乳洞をうがち、地表に苔をまとって、いまの稜線になった。
その斜面に、人は石を積んで暮らしてきた。崩れかけた石積みの集落は、土地が憶えている時間そのものだ。
KARST LODGE は、その記憶を壊さずに住まう試み。十室の宿は、石と苔と霧のあいだに、静かに置かれている。
客室
標高
石積み再生
宿を起点に、土地の記憶を歩いて巡る。鍾乳洞も、苔の森も、石積みの里も、すべて足もとから続いている。
THE CAVE
MOSS FOREST
STONE VILLAGE
STARGAZING
HOT SPRINGS
AIRPORT
設計の出発点は「壊さない」こと。廃集落に残る石積みの外壁をそのまま遺し、内側にガラスと鉄の躯体を差し込んだ。
古い石と新しい構造のあいだに生まれる隙間が、光と風と霧の通り道になる。文化遺産と現代建築は、対立ではなく重なりとして在る。
急がない時間のための、六つの過ごし方。
石灰岩を積んだ蒸し室。冷たい湧き水と外気で、身体に山を通す。
ガイドと歩く、苔生す石灰岩の森。雨上がりがいちばん深い。
石窯と在来種。台地で育つものを、その日のかたちで供す。
鍾乳洞を活かした酒蔵。年中一定の温度が、瓶の時間をゆるめる。
土地に伝わる織りの工房。滞在の手で、一枚を結う。
光害のない稜線で、台地に寝転ぶ。石が冷えるほど、星は近い。
ひとつとして同じ間はない。地形に沿って、十室がそれぞれの景色を持つ。
石積みの壁を遺した主室。露天の石風呂から稜線を望む。
専用の苔庭をもつ独立棟。最も静かで、最も緑に近い。
台地の上層、霧の高さに浮かぶ一室。朝、雲海に出会う。
鍾乳洞に着想した半地下の間。石に包まれて眠る。