沫雪あわゆき
灰が薄く積もって、消える前の雪に似る。
見込み左寄りに灰だまり、口縁の一点が鈍く銀化。
ぐい呑 降灰釉 信楽土 φ112 × H58 mm 180 ml 214 g 還元焼成
灰音 No.024
¥24,000 在庫 1
火山灰のシリカと鉄が、顔料を足さずに青磁から黒までを描く。手びねりの一点を、灰の景色ごと手放す工房の直販。
灰は、音もなく色になる。
焼き上がった中から、使えて、景色の良いものだけを選んだ。名と、この一点だけの観察を添えて並べる。
光を返さない黒。叩くと、まだ窯の音がする。
厚く掛かった降灰釉が、黒泥土の上で光を吸う。見込みの貫入は細かく均一で、灰だまりが底へ静かに溜まった。手に取ると、思うより重心が下にある。
高台脇に石ハゼ二粒、内側の貫入は細かく均一。
一人分の炊き込みご飯に、ちょうどよい深さ。手に取ると重心が下にあって、片手で迷わず持てる。
色を足さない理由は、灰そのものにある。
鹿児島で日々降り積もる灰を集め、篩(ふるい)と水簸(すいひ)で粒を整え、長石・木灰と調合する。熔かす力は灰そのものにある。土地の灰、とは濁さない。産地は桜島と名指す。
火山灰はシリカとアルミナに富み、鉄・カルシウム・マグネシウムを含む。鉄が発色源になり、カルシウムが流れ(媒溶)を生む。だから顔料を一切足さずに色が出る。これが、色を足さないという制約の物質的な根拠になる。
還元で焼けば青磁、鉄青、暗緑へ。酸化なら枇杷から飴へ。厚く溜まれば黒、ときに油滴になる。暖色が出るのは写真の中の釉だけで、ページの地には持ち込まない。
灰釉は流れ、溜まり、縮れる。同じ調合、同じ窯でも、灰の積もり方と炎の通り道で景色が変わる。鉄釉や織部のように制御はできない。制御できないことが、そのまま商品性になる。
下の二点は、同じ降灰釉を同じ窯で焼いた碗。灰の流れだけで景色が分かれる。再現できないことを、写真で示す。
灰の景色を読む七つの言葉。作品の観察メモは、この語で書いてある。
灰が流れて溜まった模様の総称。
灰が厚く溜まり、青磁や黒に発色した部分。
炎が直接当たって出る赤茶。
土中の石が爆ぜて表面に出た白い粒。
釉表面の細かなひび。景色として肯定するもの。
鉄が窯変で鈍く銀に光る部分。
窯内の偶然で出た、予期しない発色。
灰音の仕事は、手仕事風を量産することではない。焼き上がった中から、使えて、景色の良いものだけを選び、名づけ、その見方ごと手放す。だから残す理由と外す理由を、ここに掲げておく。
全部は出さない。眺めてきれいでも、使うと手が止まる器は外す。残す一線は、毎朝の食卓で迷わず使えるか。
外した個体も少しだけ見せておく。眼が実在する証拠として。
量産ではないので、入荷は事件として扱う。次の窯出しの日に、選んだ数点を黒地で出す。
還元焼成。碗と花器を中心に、選べた数点。
窯出しの朝に一度だけ知らせます。
ぐい呑と小皿。十一点を出し、九点が嫁いだ。
湯呑と碗。八点を出した。
花器と大鉢。四点、うち一点は窯割れで外した。